溺れるナイフ
公開からしばらくたっちゃったけど、観てきました。溺れるナイフ。
少女漫画が原作だし、正直期待してなかったけど、裏切られました。もちろん良い意味で。
まず映像の美しさね。和歌山県の新宮市ってところがメインらしいんだけど、本当にきれいな所だなと。一度は訪れてみたいと思いました。
この作品では『対比』がとても印象的でした。都会と田舎、男と女、昼と夜、光と影、海と炎、青と赤、白と黒、そんな正反対の2つがうまく表現されていて、登場人物の心情の移り変わりを絶妙に表現してるのかなと。コウも夏芽も感情が表情に出るわけじゃないんだけど、周りの景色だったりが複雑な感情を表してくれている。
コウと夏芽のミステリアスな雰囲気、表情は菅田くんと菜奈ちゃんだからできた演技で、さすが日本を代表する若手俳優さんだな。
そしてやっぱり重岡大毅演じる大友ね。完全にリア恋枠。大友みたいな男子に憧れる女子は多いのかな。しげの演技が自然すぎて、どこまでが演技でどこからがアドリブなのか全然わからなかった。台詞噛むところも、すらすら言えてないところが大友っぽいし、リアルさを出してた。眉毛の件は和んだ。でもあのシーンのイチャイチャからのキスは心臓破裂するかと思った。劇中でもカミングアウトされるけど、コウと夏芽の2人の世界が誰も踏み込ませないものだって分かっている大友は決して夏芽に近づこうとせず、一番の理解者、友達でいようとするんだけど、あのキスは大友の本音が出たシーンだと思う。抑えきれない想いが爆発したんだろうね。あと歌うところ…大友は夏芽の一番の理解者。だからこそ涙は見せなかったのかなとも。大友には是非幸せになってほしい。神さん、大友を幸せにしてあげてください。
コウの海に対して大友は椿で表現されてる。気になって赤い椿の花言葉を調べたらどうやら「控えめな素晴らしさ」「謙虚な美徳」等と出てきて、とっても大友らしい花だと感じてしまった。大友は椿の花を散らさないんだけど、コウは撒き散らすんだよね。そんな破壊力に夏芽は光を感じてしまったんだろうね。遠くに行くためには控えめに生きてはならない。この作品の中での椿はとっても重要なメッセージを秘めているんじゃないかなと勝手に想像していました。
私はこの作品を観た後、すごく胸が苦しくなりました。言葉に表せない悶々とした気持ちにもなりました。現実ではあり得ないであろうことだけど、どこかにリアルさがあって、誰もが少なからず抱えている苦しみなのかなと。子どもから大人になる過程でぶち当たる悩みでもあり、喜怒哀楽だけでは表現できない微妙な感情にも気づかされたというか…
こんなにも裏切られるとは思わなかった。もっと宣伝してほしかったなぁー。とにかく映像がきれいなんだよ。
最後にね、監督が山戸結希さんという方なんだけど、ぶっちゃけ名前も聞いたことなくて、どんな作品作ってるのかも知らなかったんだけど、こんな素晴らしい作品撮れる監督さんがいてくれたことに感謝したい。後から調べたら乃木坂のMVも撮っていたりして、世界観を作り出すのが物凄くうまいんだろうなー。対比、自然を表現するのがとてもお上手で、こんな素晴らしい監督さんの作品に出会えて良かったです。
今年一番刺さった映画です。これまじで。
もう一回見たかったなぁ…